2005年08月28日

運命の人

※もう何を注意していいのか…。

いつだったか、じっちゃんの日記を読んだ時
「恋だけが人生のすべてじゃないと思う」と書かれていたことがありました。
すぐ側で小さく千切ったチーズをかじるじっちゃんを掌に載せて、ぼくは言いました。

そうでもないと思うよ?って。


「…ねぇ?そんな顔しちゃいやだよ?」

だってなんかその顔、あんまり見たことなくって戸惑っちゃうよ。
いつもみたいに不敵に、元気に、笑って見せて?
それに、なんだか遠い気がする。
いつものように手を握ってくれてるはずなのに、とっても遠くにいる気がするよ。


ねえ聞いて。今日は久々に、とっても素敵な夢を見たんだよ。
なんだと思う?郎ちゃんも知ってる夢だよ。

ぼくらが初めて出逢った頃のことを見たんだ。
あの頃ぼくは好きだった、でも一緒にはなれなかった人を亡くしたあとで
寂しくて悲しくて毎日泣いてたっけ。
もうとっくに当たり前になった花屋の仕事も、始めたばかりで不安でいっぱいだった。

そのお店の軒先に、あなたは毎日来てくれてた。
じっと花を見つめてるその顔はなんだか楽しそうで…
一見ニヒルで堅そうな姿なのに、子供みたいな人だなぁ、なんて思ってた。
そんなあなたから、プレゼントを貰うなんて思いもよらなかった。
あのブーメラン、未だによく手に取るんだ。初めてあなたから貰ったものだから。
最初に貰った、宝物だから。

次に貰った宝物は、貴方が初めて買ってくれた8本のバラの花束だった。
その次は、キラキラ輝く赤い石をはめた指輪だった。
赤が好きなの?と聞いたぼくの、バンダナを巻いた頭をくしゃくしゃ撫でて
あなたは「赤は87の色だからな」って言ってくれた。

初めての子が生まれてからは、本当に怒涛の日々だった。
一日が長くて、でもあっという間に過ぎていって。
あなたはやっぱり想像通り…いや、それ以上に子供っぽい人だったけど…
誰よりも優しくて優しくて。

初めて赤ちゃんを抱いた時、あなたは半泣きでありがとうばかりを繰り返してたっけ。
あの時から、ぼくはあなたの子供を20人は産みたいって思ってたんだよ。
口に出すようになったのはずっとあとだけどね。途方もないと思っていたし。

お義兄さんの家から、二人で手をつないで帰った時のことも夢に見たよ。
あの時も君はぼくのあまり知らない顔をしていたっけ。
ちょっと寂しくて、少し嫉妬もした。それから…約束もした。


日を追うごとに、ぼくらの子供たちや、思い出がみるみる増えていったね。
壁に穴があいたり、食卓に魔物が並ぶようになったり、
8人目の子供に度肝を抜かれたり、いきなりあなたがハードゲイになって帰ってきたり。

それからぼくが他の人のところに行っちゃったりもしたね?
あれ?拗ねちゃった?ごめん、ごめんってば。ちゃんと聞いて、お願い。
…喧嘩もしたけど、毎日がまるで夢にように楽しくて、幸せだったんだ。

ああ、なんだか眠くなってきちゃった…。
外はうっすら明るくなり始めて、消え入りそうな星が白く瞬いて、鳥たちが囀ってる。
きっと今日も晴れるね。どこまでも抜けるような、美しい空が広がるんだろうね。
空の青って、大好きだよ。空はあなたの色だから。


ねぇ、もっとこっちに来て?一緒にいたいよ。

ぼくが眠るまでぎゅって抱きしめていて。

伸ばした手を取ってくれるあなた。いつだって望んだものをくれたあなた。
ずっと側で愛してくれたあなた。

なのに約束を破るのは、いつもぼくだね。
ねえ、本当にぼくでよかった?ぼくはあなたを幸せにすることができた?
くれる答えも、あなたの気持ちも知ってるけど、聞かずにはいられない。
ぼくはそんなダメなやつなのに。


ありがとう。
とってもあったかいね。

ふふっと笑って、その胸に頬ずりをして。髪を触ってもらって、キスをしてもらって。

こうしてるとすごく安心する。

今のぼくはとてもとても、きっと世界一幸せだ。


本当はね…
ずっとこうしていたい…。

だけどぼく、もう眠いんだ…とても…。


「…あぁ、このままでいよう。
 眠った後もずっと抱いているから、
 安心して…ゆっくり休みなさい…」


あなたの声。あなたのぬくもり。あなたの色。すべてが包み込んでくれる。
暗闇でも白い光でもなく、ぼくは青にとけていく。
あんなに怖くて不安だったのに、今はちっとも怖くなんてないよ。


「ありがと、ね…
 おやすみなさい……」


絞り出した声は、ちゃんと届いた?少しかすれてしまった気がする。

もう一度挨拶をしようとした唇に、羽が触れるような優しいキスが落ちてきた。
くすぐったくて身をよじろうとしたけど、もう身体には力が入らなかった。


だから、せめてとびきりの笑顔を見せて。


ぼくは目蓋を閉じた。


「―――大好き、だよ…」


溜まっていた涙が、目尻から頬をつたってあなたの胸へ滑り落ちた気がしたけど。
ぼくはそのまま、青に身体を預けた。



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8/28未明、ついにエイト87が天寿を全うすることとなりました。38歳でした。
PeoPle初参加であったこの子は、始めはホントに
「子供どころか結婚も友だちもできないんじゃ…!」とビクビクしてばっかりでした。
その子がよもや、こんな日記までつけるようになり、子宝記録を更新してしまうとは。
…えっと、ホントに記録更新ですよね?もっと産んだ方いないですよね!?(不安)

これもひとえに87の人生に関わってくださったすべての方々と、
何より伴侶となってくれたマルチェ郎さんのおかげでした。

そして、オンラインアンソロジー89さまの企画PeoPleだったというのに
とうとうククールと関わることができなかった事…というか
この日記があまりにも主旨とかけ離れていて、おそらく不快な思いを
された方もいらっしゃるのではないでしょうか…ちょっと心配です。
改めてお詫びいたします。主ククのみなさまごめんなさい…。

でもマルチェ郎さんという旦那さまと結ばれたことは本当に奇跡でした。
感謝の気持ちでいっぱいです。

来世のことは…正直87が幸せすぎて、ちょっと怖いです。
そして転生するとしたら、マルチェ郎さんの人生を見届けてからにしようと思います。

あらくったい花屋が現れたら、それ多分87の生まれ変わりです。
それでは、再びお目にかかれます日まで
「エイト87の郎ちゃん見守り日記 in あの世」
をお送りします。
暇で暇で死にそうな時にでも流し読み下さい。(笑)
posted by エイト87 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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